2020年1月10日(金)、ANALYST NETが公開したレポートをきっかけに、Abalance(3856)が急騰。寄り付きから30分でストップ高を付けました。
ANALYST NETのレポートとは何か。40ページにのぼる分析資料の要点をまとめて解説します。
目次
Abalance(3856)の銘柄情報
Abalanceの基本情報(本日時点)
まずは現在の株価水準や時価総額など基本情報を押さえます。
会社名 | Abalance |
銘柄コード | 3856 |
株価 | 699円(前日比+100円) |
時価総額 | 36.2億円 |
PER | 17.0倍 |
ROE | 15.6% |
配当 | 17円 |
株主優待 | 無し |
Abalanceの業績情報
直近の決算内容と、今期計画を振り返ります。
(百万) | 1Q実績(前年同期比) | 前年同期 | 通期計画(前年同期比) |
売上 | 1,828(△14.5%) | 2,138 | 7,200(+20.3%) |
営業利益 | 253(△10.5) | 282 | 430(△29.3%) |
経常利益 | 183(△33.7) | 276 | 410(△27.6%) |
純利益 | 106(△40.1%) | 177 | 267(△15.5%) |
Abalanceの株価が高騰したレポートとは?
さて、本題の株価が高騰した理由です。起爆剤となったのは、2020年1月9日(木)にリリースされたANALYST NETのレポートでした。
ANALYST NETとは
まず、ANALYST NETについて説明します。
ANALYST NETとは、2013年頃から活動を開始した『証券アナリストに限定せずに、コンサルタントや研究者など幅広い執筆者による企業分析・評価によってアナリストレポートへのアプローチと収入基盤の多様化を目指すプロジェクト』(ANALYSTNET企業レポートHPから引用)です。
運営は株式会社ティー・アイ・ダヴリュとアナリスト・ネット・ホールディングス株式会社の2社。セミナーなども開催する団体のようですが、実施された形跡はありません。企業レポートも月1件程度、こじんまりとした活動をしていますが、分析内容はかなり詳しいです。
レポート
こちらが実際のレポートです。筆者が捉えた要点は後述しますが、全文確認したい方は以下からどうぞ。
要点
40ページの大作なので、個人的に株価が反応したと思われるところをピックアップしました。

2021年6月までに、太陽光発電が50MWの新規稼働し、それが利益貢献するとのこと。営業利益で7億円弱、EBITDAで15億円弱が上乗せされるとなればそれは大きいですね。
気になるのは新たに今後「20年近く30円程度の固定買取制度の恩恵を受ける」ということ。本当にその見積もり、『合っている』のでしょうか?
本記事後半に分析しています。

上記50MWの新規稼働が始まれば、時価総額77億円、今の株価700円に対して倍以上の上昇が見込めるとのこと。
その他、以下3つのアップサイドが織り込まれれば、株価2,000〜4,000円が見込める。株価3倍〜5倍、かなりの煽り文句です。その三つとは、
・住宅用太陽光発電の取り組み+海外展開
・ベトナムISUNのIPO
・建機販売+ITのアップサイド
これが本当なら、金の卵。市場が反応するのも分かります。
株価上昇は見込めるか?
株価が上昇した理由が分かりました。では、本当に株価上昇は見込めるのか。私なりに分析してみました。
直近の株価チャート
レポートが出た直後の株価の動き、チャートを残します。また、1/10のPTSにおいてもAbalanceはストップ高を記録しました。その日の5分足からは、市場に迷いがあるのか、次の日も上昇する力を残しているのか、情報に対する市場の反応として非常に参考になります。日足、月足も、今後の株価を占う重要な情報として載せておきます。
ただし、本銘柄に置いてはチャートよりもその内容の真実性の方が今後の株価を占う上で重要と考えます。
それはのちほど。




私的見解
不確定事実がある以上あくまで私見ですが、このレポートの不審な点に切り込みます。
レポートには実は以下のような注釈があります。

「買取機関が終了となる2019年以降、引き続き売電できるかどうか、また売電できたとしても、価格がどれくらいになるのか、以前未定であり、買取価格が大きく下がることが問題視されている。」
30円を想定していた太陽光の売電価格、実際はいくらが期待できる?
太陽光の売電価格推移
以下のグラフはsolar planetsというサイトから引用です。こちら

2019年度の10kW以上提供される場合の売電価格は14円です。
14円です。
今後も下落が懸念されます。
30円なんてもってのほかですね。
太陽光発電事業は、固定買取制度が成立してから雪崩のように事業参入が相次ぎました。結果、電気料金が嵩み、今は是正の方向に向かうべく売電価格を下げる方向に政府が動いています。
当初の目論見と異なり、早期に固定価格が下がったこと、発電効率を保つためには維持費がかなりかかるなどのことから、事業廃止も相次いでいる業界です。
50MWは、この会社にとっては確かに大きいかもしれませんが、維持費を差し引いてどれだけ収益化出来るかは、しっかり見極めてから投資しても遅くないのではないかと思います。
参考までに
レポートでは、同業の取り組みとしてエフオン(9514)が引き合いに出されています。バイオマスとしては売電価格は30円あるのか、エフオンの決算説明資料を確認してみると。

一番高いのが32円、素材次第では13円となっています。
他にも売電価格のグラフがありましたが、それには目盛値の記載がなく、相対的な推移を示すだけのものでした。
購入量はけた違いで売電価格32円の未利用木材が多いです。そこから考えるに、エフオンの平均売電価格は比較的高めだということがわかります。
『バイオマスと太陽光発電を直接比較することは困難』とレポートにも記載されています。困難とはわかりつつも、それを適用したところかなり期待できる結果になったと。
多少意図的な煽りも感じますが、前提として注意を設けている以上、「偽り」ではないですね。
ここから先は、各人の独自の調査、判断が必要になると思います。
この記事もあくまで個人的見解、注意が必要です。